さて、今回のテーマは「PDFの規格について」です!
現在ではPDFは日常生活の中で当たり前のように使われていますが、印刷業界で使われる「PDF/X」以外にも様々な規格があることをご存知でしょうか?
今回は様々な業界で使用されるPDFについて、その規格と仕様について簡単にご紹介したいと思います♪
おしながき
1. 改めて、PDFとは?
2. 印刷業界向けの規格「PDF/X」
3. 長期保存用の規格「PDF/A」
4. 可変印刷向けの規格「PDF/VT」
5. 技術文書向けの規格「PDF/E」
6. ユニバーサルアクセスに配慮した規格「PDF/UA」
7. PDF規格の確認・変換方法
1. 改めて、PDFとは?
PDFの規格についてご紹介する前に、PDFについても改めて復習しておきましょう。
PDFはPortable Document Formatの略で、Adobe社が1990年代初めに文書共有を目的として開発し、ISO32000で国際標準化された電子文書ファイル形式です。
作成元と異なるコンピュータ環境においても作成元文書のレイアウトや書式と同様の表示・印刷を行うことができ、現在では電子文書のデファクトスタンダードとなっています。
閲覧は「Acrobat Reader」などのPDFビューアーで行います。
「Acrobat Reader」はWindows・macOSなど各種OSに対応したものが無償で配布されています。
そして今回のテーマである「PDF規格」ですが、そもそもなぜ様々な規格があるのでしょうか?
PDFファイルは様々な環境で開けるためデータの受け渡しによく使われますが、目的に合った設定をしていないとトラブルが発生する場合があります。
例えば印刷用途で使用したいのにPDFにフォントの埋め込みがされていない場合、PCにインスト―ルされていないフォントが使われていると文字化けしてしまったり、別のフォントに置き換えられてしまうということがあります。
このようなトラブルを避けるために、国際標準化機構(ISO)が用途にあった規格を定めているというわけです。
それでは、ここからは様々な規格をご紹介していきます!
2. 印刷業界向けの規格「PDF/X」
このブログを見てくださっているのは印刷・デザイン業界の方が多いのではないでしょうか。そんな皆さまに馴染み深い規格が「PDF/X」かと思います。
これは印刷用途に最適化されたPDF規格であり、印刷上問題となる不確定要素をできるだけ排除した内容になっています。
中でも「PDF/X-1a」「PDF/X-4」は印刷時に安定した出力が望めるため、日本では数多くの印刷会社で「PDF/X-1a」もしくは「PDF/X-4」での入稿を推奨しています。
そのため、ここではこの2つの規格をご紹介します。
・「PDF/X-1a」
ISO 15930-1にて規定されており、以下のような条件があります。(これが全てではありません)
・カラーはCMYK+特色が使用できる
・フォントを埋め込む
・透明情報を含まない
かつてはこの規格が印刷業界の主流となっていましたが、透明情報を含むオブジェクトの分割統合処理が必要になるため、RIP技術が発達し透明をそのまま処理できるようになった現在では、次にご紹介する「PDF/X-4」での運用が主流となってきています。
・「PDF/X-4」
ISO 15930-7にて規定されています。
「PDF/X-1a」とは異なり、カラーとしてRGBも許容することや、透明効果もサポートしているのが大きな違いです。
最新のRIP技術であるAdobe PDF Print Engine(APPE)はPDFをダイレクトに処理することができ、透明効果の分割処理をRIP内部で行うことができるため、APPEのワークフローにおいてはPDF/X-4の使用が推奨されています。
さて、ここからご紹介する規格は聞いたことがないものが多いかもしれませんが、知っていればどこかで役に立つ(?)かもしれませんので、ぜひ目を通していただければと思います!
3. 長期保存用の規格「PDF/A」
「PDF/A」(PDF/Archive)は電子文書の長期保存を目的としており、主に印刷用途として利用されていたPDFを長期保存するために特化させた規格になります。
以下のような条件があり、内容の保全に影響がある機能を制限しています。
・フォントを埋め込む
・暗号化の禁止(パスワードによるアクセス許可はできない)
・外部コンテンツへの参照禁止
・LZW圧縮の禁止
PDF/A-1 (ISO 19005-1)、PDF/A-2 (ISO 19005-2)、PDF/A-3 (ISO 19005-3)があり、特に公文書などでの利用が増えています。
4. 可変印刷向けの規格「PDF/VT」
「PDF/VT」(PDF/Variable Transactional)は可変印刷用に最適化された規格になります。ISO 16612-2にて規定されています。
可変印刷に利用するデータには固定のオブジェクトと可変(差し替えられる)のオブジェクトが存在し、オブジェクトを差し替えつつ印刷するということは、通常より高速なRIP処理が求められます。
「PDF/VT」では固定のオブジェクトについては文書内に1回だけ入れ込み、このデータを複数ページから(あるいは同じページ上から複数回)参照できるようにすることでファイルサイズを最適化することができます。
また特別な識別子を入れておくことで、処理済のグラフィックについては再度RIPする必要がなく、キャッシュからラスタライズ結果を取って来ることができる仕組みとなっており、データを高速に処理することができます。
5. 技術文書向けの規格「PDF/E」
「PDF/E」(PDF/Engineering)は技術文書の交換に適した規格で、ISO 24517-1にて規定されています。
知的権利の安全な配布やCADデータなどの複雑な3次元データをPDFに組み込むことを目的とし、技術的なワークフローにおけるドキュメントの確実な作成、交換、レビューのために使用されます。
6. ユニバーサルアクセスに配慮した規格「PDF/UA」
「PDF/UA」(PDF/Universal Accessibility)はユニバーサルアクセスへの対応を目的とした規格で、障害のある方々にも閲覧しやすいように特化させたものです。
ISO 14289にて規定されています。
例えば視覚に障害を持つ人が利用する場合、音声読み上げソフト等によってテキストが正確に読み上げられる必要があるため、以下のような条件があります。
・フォントを埋め込む、テキストをUnicodeにマッピングする
・グラフィックスは代替テキストを含む
7. PDF規格の確認・変換方法
さて、ここまでいろいろな規格をご紹介してきましたが、PDFがどの規格に準拠しているのか確認する方法をご存知でしょうか?
最後に、PDF/X-4を例としたAcrobat Proでの規格の確認・変更方法をご紹介いたします。
※Acrobat StandardやAcrobat Readerではこの作業は行えません。
1.PDFを開き、ツール/印刷工程を選択します。
2.右側に表示される印刷工程ツールセットから「プリフライト」をクリックします。
3.プリフライト設定画面の「プロファイル」から準拠を確認したい規格を選択します。
4.「解析」をクリックすると、選択した規格に準拠していない場合、どの部分でエラーになったのかが表示されます。
5.「解析してフィックスアップ」をクリックすると、自動的に問題を修正した上で選択した規格に変換を行います。
Adobe社のサイトでも各種規格への変換方法について紹介されていますので、ぜひ一度確認してみてください。
今回様々なPDFの規格をご紹介しましたが、「PDF/X」以外にご存知のものはありましたでしょうか?
使う機会はあまりないかもしれませんが、様々な規格を知っておくと、いざというときに役に立つかもしれません。
PDFファイルを作成する際には、ぜひ一度規格についても意識してみてください!
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